書評

【書評】成毛眞著『amazon 世界最先端の戦略がわかる』感想…Amazonを学ぶ最初の一冊ならこれ

2019年10月30日

Amazonってどんな会社なん?

Amazonっていまだにネット通販のイメージがありますが、すでに実態はそうとは言えなくなっていたりします。

例えば、Amazonプライムの内容を見ても内容はネット通販の域を超えてますし、Alexaに至ってはAIアシスタントだったりします。

では、Amazonの本質は何かということを考えると、つかみどころがないんですよね。

飛行船を倉庫にするみたいな突拍子もないニュースでときおり世間を騒がせたりと、Amazonという企業の中にやや常軌を逸した何かがあることだけはわかるのですが。

そんなAmazonについて、分かりやすく説明してくれている本はないかと探していたところに出会ったのが、この『amazon』という本でした。

題名もそのものズバリ!ですね。

今回ご紹介したい『amazon 世界最先端の戦略がわかる』という書籍は、その名の通りAmazonについて書かれた本です。

この本は、とても平易に書いてありながら、Amazonという企業で起こっていることをくまなく語り尽くしてくれている良書です。

特に、普段ビジネスニュースに目を通されない方にとっても、現在のAmazonがどのような企業として世界に君臨しているか、とても理解しやすいのではないかと思います。

図版も多いですし、僕と同じように、

よくわからんけど取りあえずAmazonについて知りたい!

という方に対して、最初の一冊としておすすめできる非常によい本です。

この本を読めば副題の通り、きっと「世界最先端の戦略」がわかるのではないかと思いますよ!

本書『amazon 世界最先端の戦略がわかる』の特徴

本書では、著者が経営学の革命とまで言い切るAmazonのビジネス戦略について、様々な角度から切り込んでいます。

Amazonがどのような戦略をもって他社を圧倒する大企業となったのか、またAmazonの描く未来構想も含めて、巨大企業の全貌を明らかにしてくれます。

Amazonという企業について網羅的に解説してくれてます!

本書の著者は元マイクロソフトの社長を務められた成毛眞さんです。

マイクロソフトという90年代から00年代にかけてのIT業界を牽引してきた大企業のトップを務められた方なので、Amazonに対する着眼点もまた違うのではないかと思います。

また、すごく特徴的なのが、文章がとても平易で読みやすく、図版も多いことなんですよね。

こういうのも図版にしちゃう?というレベルのものまで図版だったりしますが、変に堅苦しいビジネス本よりもっと沢山の方に開かれている本だと感じました。

よく翻訳本にあるような持ってまわったような言い回しなどはないので、構えず読めると思います。

ページ数は370ページとかなりのボリュームがありますが、かなりサクサク読めると思いますので臆せず買っちゃってOKだと思います。

内容が面白いとこともあって1〜2日程度で読み切ってしまいました!

Amazonはすでにネット通販の会社ではない

この本を読んでまず知ることになるのが、Amazonはすでにネット通販の会社ではないということですね。

Amazonと言えば相変わらず段ボールのイメージが強いですが、実態としてはとっくの昔に収益の柱はそこにはありません。

むしろ様々な分野に進出し、それぞれの領域で独占状態を作りかねないくらいの勢いで拡大を続けています。

本書ではその実態について詳しく教えてくれます。

Amazonは莫大な資金を設備投資し続けてきた

Amazonは97年に上場して以来、一度も株主に配当を払ったことがないというのは有名な話です。

一般的に言って、優良企業は株主に配当を出すのですが、Amazonは出しません。

では残った純利益で何をしているかというと、すべて設備投資に回しているんですよね。

本書では、ここ数年は年間4500億円から1兆円規模の莫大な設備投資を続けていることが書かれています。

いっちょうえん…。

毎年決算上は赤字にしてまで投資に資金投入しているわけで、やはりある種の異常さがあるわけですね。

その辺りの設備やテクノロジーに対する極端さがAmazonを急成長させ、赤字であっても株価が下がらないという異常な事態を生み出し続けています。

マーケットプレイスに参入しやすくするFBAというシステム

マーケットプレイス(通称マケプレ)はAmazon内に外部の事業者が出店できるサービスです。

出品された商品は、サイトの商品一覧上はAmazonの商品と同様に表示されるのが特徴で、利用者としても決済の時点まで気づかなかったりするくらいです。

このマケプレを利用する事業者向けに提供されているのがFBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン)という仕組みです。

要は、在庫の保管や注文処理、梱包、発送といった一連の流れをAmazonの全て任せることができるんですよね。

中小企業にとってはすべてをAmazonに委ねることができ、コスト面からも歓迎したいところなのですが、ここにもAmazonの戦略があります。

本書では、中小の事業者がAmazonからインフラを与えられることで依存せざるを得なくなる一方で、Amazonはマケプレ業者から販売履歴を得られることを指摘しています。

そのため、Amazonは自社で取り扱ってない商品でも好調と分かれば、Amazonはいつでも直販できるんですよね。

何てあこぎな…。

この辺りのAmazonの巧妙さとそれを下支えする技術力、また徹底性を上手く解説してくれていますので、こちらも本書でぜひ読んでいただきたいポイントです。

Amazonの異常な財務戦略とキャッシュフロー

ここまでご紹介した以外にも、Amazonの経営には規格外の部分が多数あるのですが、そうなってくると自然とお金の使い方についても知りたくなってきます。

本書では、Amazonの財務戦略についても、詳しく追っています。

ジェフ・ベゾスが重視するキャッシュフロー経営

Amazonに特徴的なのが、お金がどう調達されどう使われたかを把握する「キャッシュフロー経営」です。

キャッシュフロー経営では、キャッシュの質を重視します。

同じ額のキャッシュが減ったとしても、借金を返した100円なのか設備投資をした100円なのかは質の面で異なります。

Amazonはこのキャッシュフローを異常に重視しており、決算時の赤字を「意図的な赤字」とまで言い切ります。

赤字にしてまで設備投資にまわしたいということですね…。

事実、Amazonは本業で稼いだ数千億の営業キャッシュフローのほとんどを投資にまわしています。

Amazonの投資を支える突出したキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)

数千億からなるAmazonの巨額投資を支える「魔法」である、Amazonの「キャッシュ・コンバージョン・サイクル」を説明した章はとても興味深いです。

キャッシュ・コンバージョン・サイクルは通常「CCC」とも呼ばれますが、端的に説明すると、商品が販売されてから何日で現金化されるかを示したものです。

もちろん、この数値は少なければ少ないほどよいのですが、Amazonに至ってはマイナス、つまり物が売れる前から入金されている状態なのですね。

売れる前から入金されてるとか、新手のスタンド攻撃か何かですかね…。

Amazonでは30日前という驚異的なCCCが実現されており、このからくりによってAmazonは常時2000億円もの自由に使えるお金を手にしていることになります。

AmazonはこのCCCがマイナスであることについて一切語っていません。

キャッシュ関連の話はAmazonの秘密主義に切り込む趣もありますし、巨大企業の財務はそれだけでとても刺激的です。

この辺りは興味深く読むことができると思います。

Amazonを支える最重要部門、AWSがわかる

現在のAmazonのほとんどの利益はAWSアマゾン・ウェブ・サービス)によって担われています。

AWSは今のAmazonを知ることに近いのですね。

Amazonは今やAWSを取り扱う一大クラウド企業

今やAmazonの収益を支えるのはAWS(アマゾンウェブサービス)というクラウドサービスなんですね。

Amazonはもともと自社のサイト運営のためにいくつもシステムを開発しているわけですが、それらを他社が利用できるように外販したものがAWSです。

AWSは今や世界シェアのクラウドサービスの3割を占めています。

最近では2019年8月にAWSの東京リージョンで障害がありましたが、多くの企業のサービスが停止しました。

このことからも、現実社会におけるAWSの影響力の大きさをうかがい知ることができます。

各方面で生じた大規模な障害はかなり大きなニュースになりました!

Amazonは技術へ投資した結果をAWSへ反映させ、毎年、機能強化と新サービスのリリースを繰り返しています。

さらにAmazonがもっとも得意とする規模のメリットで値下げを繰り返し、ヒューレット・パッカードなどの競合他社を撤退に追い込んでいます。

また、AWSのブランドを決定づけた米中央情報局(CIA)との契約など、AWSについてはかなりのページ数が割かれています。

Amazonは物流から施設から全てを構築するロジスティクス企業

ロジスティクスとは兵站という意味ですね。

兵站とは元々が軍事用語で、前線に物資を供給する後方支援的な意味合いの用語です。

ロジクスティクス企業という言葉は、AmazonのCEOであるジェフ・ベゾスが自社を指して使った言葉です。

Amazonは物流網の敷設とそれを可能にするシステム構築を最重要視しています。

巨大な倉庫と、技術投資により可能になる新技術の導入で、Amazonがどのように物流を制していこうとしてるかがわかります。

これまで、メディアで取り上げられる物流におけるAmazonの話題としては、ヤマト運輸との運賃の交渉が多かったのではないかと思います。

しかし、本書ではAmazonが物流の最重要課題である「ラストワンマイル」をどう攻略しようとしているかについて説明されています。

それぞれの分野が独立したかのように拡大していく巨大「帝国」Amazon

本書では、Amazonは企業としての統制がやや取れておらず、ジェフ・ベゾスですらその全体をよく把握しきれていないのではないかというようなことが書かれています。

それぞれの部門が別会社と言えるほどに自律的に急拡大を続けていく様は、次に何をやり出すかわからないモンスター感を見事に言い表しているようにも思います。

また、Amazonを指して、本書では「帝国」という言葉が使われています。

やや大袈裟にも聞こえますが、本書を読み進めると圧倒的なキャッシュとそれに裏打ちされたテクノロジーで勢力を広げるAmazonがよくわかります。

「帝国」という言葉には納得せざるをえません。

本書は370ページと厚みがある本ですがとても読みやすく、また読んでいて楽しい本です。

内容もとても充実した一冊ですので、Amazonという巨大企業についてちょっと知っておきたいとお思いの方には、是非おすすめの一冊です。

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